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山口地方裁判所 昭和27年(行)12号 判決

原告 下松土地株式会社

被告 山口県知事

主文

山口県農業委員会が原告に対し左記記載の土地につき昭和二十七年二月二十八日附を以てなした訴願裁決を取消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

下松市大字東豊井字江口千六十四番地

一、畑七畝九歩

事実

原告訴訟代理人は主文同旨の判決を求めその請求原因として、

下松市大字東豊井字江口千六十四番地畑七畝九歩(以下本件土地と略称)は原告の所有であるところ訴外下松市下松地区農地委員会(以下地区農地委員会と略称)は昭和二十四年七月十六日本件土地につき自作農創設特別措置法(以下自創法と略称)第三条に基き買収計画を樹立したので、原告は地区農地委員会に異議を申立てたところ同委員会は同年十一月九日異議申立は相立たない旨決定した。そこで原告は同年十一月十二日山口県農業委員会に対し訴願したところ同委員会は昭和二十七年二月二十八日附をもつて右訴願棄却の裁決をなし該裁決書は同年四月九日原告に送達された。しかし本件買収計画、訴願裁決手続には次のような違法がある。

一、本件土地は家庭菜園であるからこれにつき買収計画を樹立することは許されない。

即ち原告の前身たる日本汽船株式会社は下松港に臨む大規模の造船所新設計画を立てこれに伴う工員合宿所社宅等建設のため大正七年本件土地を含む農地六千二百八十六坪を平均二米埋立てその内三千八十六坪につき直ちに工員宿舎を建設したがその他三千二百坪については大正九年のバニツクのため予定の建築工事を見合せ、放置し長く雑草の茂るままに任せて置いたものであつて本件土地はその一部である。原告は昭和二十一年四月頃本件土地を訴外越後屋万次郎に家庭菜園として一時貸与した。右訴外人は日本石油株式会社勤務の工員であつたところ昭和二十年九月退職後も本件土地の隣接地所在の右会社々宅に居住していたものであるが当時の窮迫した食糧事情を事由に、従前日石工員訴外中野留吉が家庭菜園として使用していた本件土地を家庭菜園として借入れたい旨依頼して来たので原告はこれを容れ名目上小作料として一ケ年金九円四十銭貸借期間を昭和二十一年四月一日より昭和二十二年三月三十一日まで、但し双方の協議により一年毎に更新することができる旨定めて貸与した。訴外越後屋万次郎は爾来本件土地に馬鈴薯、人蔘、胡瓜、葱等を栽培して来たが、同人は専業農家でないので下松市農業会その他の農業者団体に加入したことなく又本件土地が食糧供出の対象となつたこともない。

かような次第で本件土地は普通の家庭菜園にすぎず自創法にいう農地(従つて小作農地)でないからこれにつき買収計画を樹立することは違法といわねばならない。

一、本件土地は自創法第五条第五号のいわゆる近く土地使用の目的を変更することを相当とするものであるからこれにつき買収計画を樹立することは許されない。

本件土地は前記の通り建物建設の目的で埋立てた土地であり下松市都市計画の主要道路である恋ケ浜鳥越線と光徳山線の中間に位する高台にあり住宅地として最も適当な土地である。本件土地の東南部に日立製作所社宅、東部に日石工員宿舎(原告所有地)更にその東部に接し下松市営住宅幼稚園、北部に日宝化学工場(原告所有地)があり、西部に鉄道線路(山陽本線)までの間に数筆の畑ありここに点々庶民住宅が新築されつつある。右の外本件土地附近には中国配電会社の変電所及び社宅下松豊井小字校その他多数の人家が集中している。

下松市長は本件土地及び隣接地に市営住宅及び毋子寮を建設する計画を立て昭和二十三年十月二十日原告に対し本件土地の借入申込をしたので原告は同日付をもつて地区農地委員会を経由して山口県知事に本件土地の使用目的変更の申請をした。然るに知事は右申請に対し許否を決せず、日時を経過するうち、昭和二十五年六月九日下松市長は原告に再び本件土地の借入方を催促し、再申請を要望して来たので原告はこれに応じ地区農地委員会経由、知事に対し、使用目的変更の再申請したが今日まで許否未定のままとなつている。

下松市長が本件土地を住宅地として着目していたことは前述の通りであるが原告は又独自の立場から、本件土地を百二十坪と九十八坪の二に区分し各地上に建築費一戸当り約金四十万円の予算で各木造かわらぶき平家建建坪二十五坪八合の住宅一戸宛を建築すべく早くから計画を立てており本訴解決次第その実現に取り掛る準備が完了している次第である。

叙上のように本件土地は地理的位置、四囲の環境、地勢等諸般の事情を綜合し考慮するとき自創法第五条第五号に規定する近く土地使用の目的を変更することを相当とする農地ということができるので、本件土地につき買収計画を樹立することは違法といわねばならない。

一、本件訴願裁決には理由を付さない違法がある。

即ち原告の本件訴願の理由は、本件土地は(イ)これに隣接する日本石油株式会社舎宅に居住中の同会社工員に家庭菜園として貸与したものである(ロ)下松市長から庶民住宅用敷地として借用の申込ある土地である、から自創法を適用して買収することは承服できないというにあるところ県農業委員会は「本件土地は耕作の目的に供されている土地であるから自創法第二条第一項に規定する農地と認められる」ので「訴願の申立は相立たない」と裁決した。同法条は単に農地等の意義を定めた規定に過ぎないからこれを根拠として買収をなし得ないこと理論上当然である。右裁決は本件土地が農地であることをもつて訴願棄却の理由とするものであり、原告主張の訴願理由に対し何等の判断を与えていない。よつて本件裁決には理由を付さない違法ありといわねばならない。

一、本件買収計画には買収の時期、買収の対価を定めない違法がある。

農地の買収計画においては自創法第六条第二項により買収すべき土地、買収の時期、買収の対価を定めなければならない。然るに本件買収計画には買収の時期、買収の対価が定められていない。昭和二十四年八月十八日付買収計画通知書(甲第一号証)には買収の時期、買収の対価が定められたものとしてその記載があるが被告が買収計画書なりと称する文書(乙第一号証)の記載と異なる。地区農地委員会は昭和二十四年七月十六日開催の委員会において、具体的に定めねばならない買収の時期、買収の対価につきこれを定めなかつたので右の如く等しく公文書たる両文書に重要事項につき矛盾した記載を生じたのである。

一、本件土地の中の非農地部分につき買収計画を樹立することは許されない。

即ち本件土地の東南隅の一部に昭和二十一年頃建設せられた約二坪六合五勺(間口一、九間奥行一、四間)の物置小屋がある。その敷地部分は本件買収計画樹立当時(昭和二十四年七月十六日)非農地であつたこと明白である。然るに地区農地委員会はこの敷地部分を農地として買収計画の対象として計画を樹立したものであるから少くともこの部分に干する買収計画は違法である。

以上の次第であるから右違法の買収計画を支持し原告の訴願を棄却した本件裁決も亦違法である、よつて本訴において右裁決の取消を求めると述べ

被告の主張に対し

一、本件土地は家庭菜園にして自創法に定める買収に適する農地でないから本件土地が小作地である理由のみによつては本件買収計画を適法とならしめるものではない。

一、自創法第五条第五号にいう「近く」を被告主張のように買収計画樹立当時すでに土地使用に関する具体的計画も経済上の問題も完了していることを必要とすると解することは法律上の根拠なく被告独自の解釈にすぎない。小作契約の解約手続がすでに完了していればも早小作関係は存在しないことになる、被告の主張によると結局小作関係が消滅していなければ近く使用目的を変更するを相当とする土地といえないことに帰し、小作関係の存在を前提とする農地買収において理論上矛盾を来すことになる。戦後庶民住宅用地として都市をかなり離れた農業地帯が選ばれる主たる理由は用地の買入又は借入費の低価という経済事情によるものである。住宅用地として農業地帯を適当とする故ではない。都市をかなり離れた農業用地に住宅が続々建築されている現前の事実は住宅の必要のために農地を壊滅して宅地とすることを力強く且つ正当に肯定するものである。すでに都市をかなり離れた農地が然りとすれば都市の地域内にあり交通に便宜な本件土地に住宅を建設し住宅への需要を充足する計画はこれを阻止すべき何等の理由がないといわねばならない。

一、本件土地上の物置小屋は東南隅にあり原告所有地(千六十一番地畑一畝十一歩、千六十番地宅地九百七十二坪四二)に接続しているから原告においてこれを単独に使用することができる。その敷地を原告の所有として置くも、その位置から考え本件土地の耕作者が耕作上非常な不利不便を被むるとは考えられないから両者間に将来紛争が当然予想されるとはいえない。叙上理由により本件は行政事件訴訟特例法第十一条第一項を適用すべき場合ではない。

旨陳述した。(立証省略)

被告指定代理人は「原告の請求を棄却する、訴訟費用は原告の負担とする」との判決を求め答弁として、

原告主張事実中本件土地が原告の所有であり地区農地委員会が本件土地につき原告主張の日買収計画を樹立し、これに対する原告の異議を却下されたので原告がその主張の日県農業委員会に訴願し右委員会が昭和二十七年二月二十八日付をもつて原告主張のような理由の下に訴願棄却の裁決をなし該裁決書が同年四月九日原告に送達されたこと、原告がその主張のような事情の下に本件土地を埋立てたこと、原告がその主張の頃本件土地を訴外越後屋万次郎に対しその主張のような条件で賃貸したこと、を認め、本件土地の隣接地が訴外日本石油株式会社、日立製作所等の社宅用地として使用されていること、訴外越後屋万次郎が本件土地に野菜類を栽培していたこと、右訴外人が農業団体に加入したことのないこと、本件土地が食糧供出の対象の土地でなかつたこと等は不知である。その余の原告主張事実を争う。

一、本件土地は農地にして小作地である。公簿上田地であるが昭和四年頃畑地となり昭和十五年頃から訴外中野留吉が原告から賃借耕作し、昭和二十一年四月から訴外越後屋万次郎が原告主張のような契約で賃借し畑として耕作し現在に至つている。叙上の次第で本件買収計画樹立当時本件土地は農地であり且つ小作地であるから本件買収計画は適法である。

一、本件土地は近く使用目的を変更することを相当とする農地と認められない。本件土地につき近く使用目的を変更するような具体的計画は認められない。仮に下松市当局が本件土地を市営住宅敷地として予定し、又原告がその独自の計画に基く貸住宅の敷地に充てる予定であつたとしてもこれをもつて直ちに自創法第五条第五号該当地ということはできない。何故なれば(イ)本件土地が市営住宅、原告計画の貸住宅のいずれの用地に充てられるのか未定であり右計画は机上の計画ないし構想にすぎない。右法条にいう「近く」とは買収計画樹立当時すでに具体的計画も経費上の問題も、また賃貸借契約に基き他人が耕作している場合はその契約の解約につき法定手続も、各完了しているという程度にあることを必要とするからである。(ロ)市営住宅地であれ貸住宅であれ住宅の建築は戦後はことに都市郊外において行われるのが一般的であり、むしろ都市をかなり離れた農業地帯が選ばれているのが経験上も常識である。故に店舖とは反対に住宅用地に予定されている程度の土地は農業用地として適当な土地である。かように本件土地は自創法第五条第五号に該当する土地ということはできない。故に本件買収計画は適法である。

一、本件訴願裁決は訴願法第十四条にいう理由を明に付した適法な裁決である。本件訴願裁決書(甲第二号証)によるとこれに形式的に理由が付されていることは明白である。原告の訴願の理由は結局「本件土地は非農地である」ということになるので、裁決理由は申立に相応したものである。仮に裁決理由が正当でないとしてもこれをもつて直ちに理由を欠いた裁決ということはできない。形式的に理由が述べられている限り訴願法第十四条にいう理由を付したことになるからである。

一、本件買収計画には買収の時期、買収の対価の定めがなされている。仮に然らずとするも買収手続上買収の時期、買収の対価は客観的に定まつており且つ本件買収手続における如く買収計画の縦覧に際しすでに明白に買収の時期、買収の対価の記載がなされている場合は農地委員会の決議においてこれを欠いたとしてもこれによつて法律関係の不特定とか、被買収者の権利の擁護に格別支障を来たすわけはない。右にいう買収の時期、買収の対価が客観的に明白であるというのは要するに買収時期は、三月二日七月二日十月二日十二月二日というように全国一斉に定められており、買収の対価は自創法第六条第三項に定める対価の最高額(畑にあつては賃貸価格の四十八倍)とすることも行政的に農地委員、農地委員会書記に明白に認識されているのみならず、いわゆる「農地改革による買収価格」として社会通念上、も早常識となつているほど明白な事実であることを意味する。

昭和二十四年八月十八日付買収計画通知書(甲第一号証)は自創法上はこと更に作成する必要のないものである。右通知書は地区農地委員会が被買収者の不報の申立の機会を失はないようにするため好意的に作成した文書である。この文書の記載と買収計画書(乙第一号証)の記載に不一致があつたとすれば前者の記載が誤りで後者の記載が法律上有効である。

かように本件土地の買収手続においては法定の手続のみでなく法定外の事務手続をとつてまで原告の権利擁護不服の申立の機会につき便宜を与え、且つ事実上公告縦覧に際してはこの点についていささかの瑕疵なく、適法の期間内に原告をして異議申立をなさしめた。自創法に複雑、慎重な買収事務手続を規定したゆえんは買収が国民の財産権を侵害することあるにかんがみ、被買収者の権利主張の機会を充分に与えるためである。そうすると地区農地委員会のとつた買収手続に仮に微々たる瑕疵があつたにせよ、右の目的が充分に果されている本件においてはこの瑕疵は本件買収計画を取消す程の違法のものということはできない。

一、本件土地上に昭和二十一年頃から原告主張の物置小屋があつたとしてもその敷地(非農地)部分は僅かに二坪余のことであるから、これを買収計画から削除しなかつたことは二百十九坪にも及ぶ本件土地の買収計画を取消さねばならぬ程の瑕疵ではない。仮に右主張が理由なしとしても原告のこの点に関する請求は行政事件訴訟特例法第十一条第一項の規定により棄却さるべきものである。すなわちこの部分を買収計画から削除するとこの部分は本件農地中にポツンと一点とびはなれた原告所有地となり原告に対しこれを単独で利用すべき利益をもたらさず、一方本件土地の耕作者は耕作上非常な不利不便を蒙ることになり両者間の将来の紛争は当然予想されるところである。結局この非農地部分に関する買収計画は違法であるとしてもこれを取消すことは公共の福祉に適合しないものといわねばならないからである。

叙上理由により原告の本訴請求は棄却さるべきものである旨陳述した。(立証省略)

理由

下松市下松地区農地委員会が昭和二十四年七月十六日原告所有に係る本件土地につき自創法第三条に基き買収すべきものとして買収計画を樹立しこれに対し原告から異議を申立てたが却下されたので、原告は更にこの却下決定に対し山口県農業委員会に訴願したところ同委員会は昭和二十七年二月二十八日附裁決書で「異議の申立は相立たない」と裁決し該裁決書が同年四月九日原告に送達されたことは当事者間に争がない。

先づ本件土地が自創法第五条第五号にいう「近く土地使用の目的を変更するを相当とする農地」であるか否かについて考えて見る。

その記載と本件弁論の全趣旨を綜合し真正に成立したものと認める甲第八号証の一、二、甲第九号証の一、二三、当裁判所の検証の結果、原告代表者山田孝太郎訊問の結果を綜合すると本件土地は元、田地であつたものを埋立てたもので下松市都市計画の主要道路である恋ケ浜鳥越線と光徳山線の中間よりやや前者寄りにあつて高台をなし現状は畑地であるが直ちに宅地とすることができるものでありその東南部に水路を隔てて日立製作所工員社宅、幼稚園、風呂屋等があり、東部は約三尺高い宅地(現状は建物なくコンクリート製土台あり)をなしその東方に市営住宅、幼稚園、豊井小学校が連立し、北部は日宝化学工場敷地に連り右工場の北方に日本石油工員社宅、その北方に中国配電会社の変電所社宅等があり、東部には畑がありその一部は宅地化し新築家屋一軒が建設してあり本件土地を含めた附近一帯の現況は住宅街の様相を呈しているものと認めることができる。

又当事者間成立に争のない甲第五号証、第六号証の二、三、第七号証証人石井成就の証言、原告会社代表者山田孝太郎訊問の結果及びこれにより真正に成立したものと認める甲第十一号証の一、二、三を綜合すると原告は昭和二十三年十月頃下松市から本件土地及びその附近一帯の原告所有地を同市経営の住宅、毋子寮等の建設用地として借入方申入を受けたのでこの申入に応ずべく同年十月二十日附書面をもつて山口県知事に対し本件土地等の使用目的変更の申請をしたところ何等の決定なく、昭和二十五年六月九日下松市から再び同様申入を受けたので再び知事に対し前同様申請したが許否未決のまま現在に至つたこと、右許否未決のため下松市営住宅毋子寮の建設の見込がなくなつたので原告はその独自の計画に基き本件土地に二戸の貸住宅を建築すべく準備していることを認めることができる。

叙上認定に係る本件土地の立地条件、その現況、周辺の土地使用の状況等諸般の事情に鑑みると本件土地は前示買収計画樹立当時において比較的近い将来宅地に転用される高度の蓋然性が認められ、自創法第五条第五号にいう近く土地使用の目的を変更することを相当とする農地ということができる。

この点に関し被告は右法条にいう「近く」とは買収計画樹立当時土地使用の計画がすでに具体化し、これに要する経費の問題、土地使用権利者に対する解約の問題等も解決している程度に土地使用目的変更の必要性が切迫していることを意味するので本件はこれにあたらない旨主張するので考えて見る。土地の利用価値はその客観的条件によつて規制されるものであるから従来農地としての利用価値しか持たなかつた土地もその置かれた立地条件、四囲の土地の利用状況の推移等の客観的条件の変化によつて農地として利用するよりも宅地として利用することが利用価値を増大するに至つたときは宅地に転用されることは必至である。かような農地を買収して売渡したところでおそかれ早かれ宅地として転用されること必然であり自創法の制定目的である自作農創設の趣旨に副わない結果になること明である。この点において買収し得べき農地であつても特にこれを買収しないことにしたのが自創法第五条第五号の立法趣旨である。そうすると買収計画樹立当時当該農地の客観的諸条件から観察し比較的近い将来宅地に転用される高度の蓋然性があればこれを買収しないことが右法条の立法趣旨に合致するものと解すべきである。よつて右にいう「近く」を固より土地所有者の単なる主観的観測や漠然たる将来の意味に解してはならないが、土地使用目的変更の必要性が被告主張の如く現実且つ具体的に切迫しているような極めて近い将来の意に解する必要なく、当該農地の客観的諸条件から見て右必要性が予測できる程度の比較的近い将来を意味するものと解するを相当とする。よつて被告の前記主張は採用しない。

よつて本件土地の買収計画に対する訴願裁決の取消を求める原告の本訴請求は爾余の争点につき判断するまでもなく正当としてこれを認容すべきものとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文の通り判決した。

(裁判官 河辺義一 藤田哲夫 永岡正毅)

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